会社の設立・変更手続き

役員の任期は?

会社に必要な機関」では、会社を創る上で必要となる機関について確認しましたが、ここではその必要な機関のうち役員及び会計監査人の任期について説明していきます。

 

(1)通常、取締役の任期は何年ですか?
取締役の任期は、約2年と定められています。なぜ約2年かというと、規定上、次のようになっているからです。
取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。(会社法332条1項本文)
つまり、定時株主総会の終了時まで任期があるため、ちょうど2年になるとは限らないからです。
なお、定款や株主総会でこの任期を短縮することができます。(会社法332条1項但書)
これは何を意味するのかというと、取締役の任期は約2年より短ければ、特に制限されていないということです。極端な話、1週間でも構わないということになります。
(2)全ての株式会社の取締役に当てはまりますか?
いいえ、(1)で述べた規定が当てはまるのは、公開会社だけです。非公開会社であれば、約2年以内という規定は当てはまりません。
(3)では、非公開会社の取締役の任期は何年ですか?
非公開会社の場合、取締役の任期は約10年まで伸長することが出来ます。(会社法332条2項)
約10年の理由は(1)で述べたのと同じで定時株主総会の終了時まで任期があるため、ちょうど10年になるとは限らないからです。なお、約10年以内であれば、例えば「5年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」とかでも構いません。つまり、約10年を超えない範囲内であれば、必要に応じて、自由に設定することが出来ます。
ちなみに、この規定は「委員会設置会社」には当てはまりません。理由は、委員会設置会社では別の任期規定が当てはまるからです。
※詳しくは本ページ(15)に記述します。
(4)(1)〜(3)の他に取締役の任期が満了する場合はありますか?
あります。具体的には次のとおりです。
  1. 委員会設置会社になった時
  2. 委員会設置会社でなくなった時
  3. 委員会設置会社以外の会社で、発行する全ての株式について譲渡制限を設定している会社が、その制限を解除したとき。(非公開会社が公開会社になったとき)
という規定が、会社法332条4項に有り、これに該当すると、たとえ任期の途中であっても、取締役の任期は満了することになります。
(5)通常、監査役の任期は何年ですか?
監査役の任期は、約4年と定められています。なぜ約4年かというと、規定上、次のようになっているからです。
監査役の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。(会社法336条1項)
つまり、定時株主総会の終了時まで任期があるため、ちょうど4年になるとは限らないからです。
なお、取締役と違って、この任期を短縮することは原則できません。取締役と違い、短縮できるという規定が置かれていないからです。但し例外として、定款の規定で、任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期を、退任した監査役の任期の満了時まで、と定めることができ、この場合には任期は4年よりも短くなることになります。(会社法336条3項)
(6)全ての株式会社の監査役に当てはまりますか?

いいえ、(5)で述べた規定が当てはまるのは、公開会社だけです。非公開会社であれば、約4年以内という規定は当てはまりません。

(7)では、非公開会社の監査役の任期は何年ですか?
非公開会社の監査役の任期は、非公開会社の場合の取締役の規定と同じです。つまり、約10年まで伸長することが出来ます。(会社法336条2項)
約10年の理由は(5)で述べたのと同じで定時株主総会の終了時まで任期があるため、ちょうど10年になるとは限らないからです。なお、約10年以内であれば、例えば「5年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」とかでも構いません。つまり、約10年を超えない範囲内であれば、必要に応じて、自由に設定することが出来ます。このことも、非公開会社における取締役と同じになっています
(8)(5)〜(7)の他に、監査役の任期が満了する場合はありますか?
あります。具体的には次のとおりです。
  1. 監査役を置く旨の定款の規定を廃止した時
  2. 委員会設置会社になった時
  3. 定款において監査役の監査の範囲が会計監査に限定されている場合で、その定款の規定を廃止した時
  4. 委員会設置会社以外の会社で、発行する全ての株式について譲渡制限を設定している会社が、その制限を解除したとき。(非公開会社が公開会社になったとき)
という規定が、会社法336条4項に有り、これに該当すると、たとえ任期の途中であっても、監査役の任期は満了することになります。
(9)通常、会計参与の任期は何年ですか?
会計参与の任期は、取締役の任期を定めた会社法332条を準用しているため、取締役と同じ、約2年となります。(会社法334条1項)
また、定款や株主総会でこの任期を短縮することができ、任期を約2年より短ければ、特に制限されていないということも、取締役と同じです。
(10)全ての株式会社の会計参与に当てはまりますか?
いいえ。これも取締役と全く同じで、約2年の制限があるのは公開会社の会計参与だけです。
(11)では、非公開会社の会計参与の任期は何年ですか?
非公開会社における取締役の任期と同じで、約10年まで伸長できます。委員会設置会社には当てはまらないのも、取締役の場合と同じです。
(12)(9)〜(11)の他に会計参与の任期が満了する場合はありますか?
あります。具体的には次のとおりです。
  1. 委員会設置会社になった時
  2. 委員会設置会社でなくなった時
  3. 委員会設置会社以外の会社で、発行する全ての株式について譲渡制限を設定している会社が、その制限を解除したとき。(非公開会社が公開会社になったとき)
  4. 会計参与を置く旨の定款の規定を廃止した時
会社法332条4項の準用(会社法334条1項)及び会社法334条2項

取締役の場合と同じく、これに該当すると、たとえ任期の途中であっても、会計参与の任期は満了することになります。
(13)通常、会計監査人の任期は何年ですか?
会計監査人の任期は、約1年と定められています。なぜ約1年かというと、規定上、次のようになっているからです。
会計監査人の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。(会社法338条1項)
つまり、定時株主総会の終了時まで任期があるため、ちょうど1年になるとは限らないからです。
会計監査人の任期規定は、公開会社、非公開会社ともに同じです。つまり、約1年という以外に任期は設定できません。
なお、会計監査人には、他の役員と違い次のような規定が置かれています。
会計監査人は、定時株主総会において別段の決議がなされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなす。(会社法338条2項)
会社の役員は、任期が終わった時に再任の決議がなされない限りは退任するのですが、会計監査人においては退任せず、再任されたものとみなされます。これは、会計監査人は取締役・監査役・会計参与と異なり、会社の役員ではなく、あくまで会計について外部から監査する役目をもった機関であるため、役員とは異なる扱いがなされているからです。
(14)(13)の他に会計監査人の任期が満了することはありますか?
あります。会計監査人を置く旨の定款の規定を廃止した時に、会計監査人の任期は満了するという規定が会社法338条3項にありますので、任期満了で再任されなかった場合以外でも、会計監査人設置の規定を廃止すれば、その廃止が効力を生じたときに会計監査人は退任します。
(15)(1)〜(14)は、委員会設置会社にも当てはまりますか?
全てにおいて当てはまるわけではありません。例えば、取締役・会計参与については、通常であれば約2年の任期が約1年となります。(会社法332条3項、会社法334条1項)これは、公開会社・非公開会社の別を問いません。つまり、非公開会社でも任期は同じになります。
また、委員会設置会社においては会社に必要な機関で述べたとおり、監査役を設置することが出来ないので、監査役の規定は当てはまりません。ちなみに、委員会設置会社において監査役の役目を果たすのは取締役会と監査委員会になります。
会計監査人については、(13)で述べたことがそのまま当てはまります。しかしながら、委員会設置会社は会計監査人を必ず置かなければならないので(14)の規定は問題になりません。
(16)では、委員会設置会社の委員に任期はありますか?
委員会設置会社の委員の任期は約1年です。但し、取締役とは違い、約1年の満了時は定時株主総会終結時ではなく、定時株主総会の終結後、最初に招集される取締役会の終結時までとなります。なぜなら、委員会の委員は取締役会で選任されるからです。(会社法400条2項、会社法402条7項)
ちなみに、この任期は定款で短縮させることが出来ます。
(17)特例有限会社の役員の任期を教えてください
まず、特例有限会社に設置できる機関ですが取締役と監査役のみです。そして、取締役・監査役ともに任期はありません。つまり、選任から何年経っても、任期満了はしません(監査役を置く定款の規定を廃止した場合を除く)。
この特例有限会社ですが、特例の適用を廃止して、通常の株式会社へ移行させることが出来ます。この場合は会社法の役員任期の規定が遡って適用されますので、例えば選任後5年たっている取締役で、移行後の会社が非公開会社の場合は、残りの任期は最長で約5年(任期を約10年に設定した場合)となります。通常は特例有限会社から通常の株式会社へ移行させるときに役員を選任し直しますので、特に問題はありませんが、新たに役員を選任せずに移行させた場合に、役員のいない会社が出来てしまう可能性がありますので注意が必要です(役員全員について選任から10年以上経っていた場合)。
(18)任期が終わる場合以外で、役員が退任することはありますか?
あります。取締役・監査役については欠格事由(会社法331条1項、会社法335条1項)に該当した時や非公開会社の場合において取締役・監査役の資格を株主に限るという定款の規定を置いている場合で、株主でなくなった場合等は資格を喪失して退任することになります。また、破産手続きの開始決定を受けた場合も(欠格事由ではありませんが)委任の終了という形で、一度退任することになります。
この他、会計参与や会計監査人は就任にあたり一定の資格が必要となりますので、その一定の資格を失った場合は退任することになります。
※会計参与は税理士・税理士法人・公認会計士・監査法人でなければ就任できません。また、会計監査人は公認会計士・監査法人でなければ就任できません。