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「自分の行動は自分で決める。」これは、人が人である限り、当然のことであると言えるでしょう。
しかし、判断能力が十分でない人は、判断能力が十分でないために、誤った判断や合理的でない判断をしてしまうことがあり、それが本人にとって不利益な結果につながってしまうこともあり得ます。
そのような事態となることを防ぎ、本人の利益を保護するためには、本人が置かれている状況や、利害関係などといった、判断に必要な情報を本人に分かりやすく説明して、本人の相談相手になったり、場合によっては本人に代わって本人の行動を決定したりするといった援助を、他人が行うことが必要となります。
従来、民法には、禁治産・準禁治産という制度が設けられていました。
これは、判断能力が十分でない成年者の権利を保護するための、「本人の保護」を基本理念とする制度でした。しかし、反面、「本人の自己決定権の尊重」という側面は軽視される傾向にありました。
その一例を挙げますと、禁治産者の行為は後見人が常に取り消すことができるとされていて、例外は認められていませんでしたので、禁治産者が日用品を購入する等の日常生活に必要な行為まで取り消され得ることになっていたのです。
ところが、これでは、禁治産者に日用品を売った相手方は、いつ後見人からその売買契約を取り消されるか分からず、法的に非常に不安定な状態に置かれる結果となってしまいます。また、その結果として、禁治産者は、日用品の売買という日常生活に必要な契約さえも相手方から拒絶される可能性があり、禁治産者にとっても非常に不利益となってしまいます。
そこで、「本人の自己決定権の尊重」、「本人に残っている能力の活用」、「ノーマライゼーション」といった、近時新たに提唱・普及している理念を、「本人の保護」という理念と調和させながら、本人の判断能力の程度に応じて、十分でない部分を補って本人を保護するための制度として、「本人の保護」と「本人の自己決定権の尊重」との調和を基本理念として、民法の改正により、禁治産・準禁治産制度から新しく生まれ変わった後見・保佐・補助の各制度が、成年後見制度なのです。
ちなみに、上記の禁治産者の一例は、この改正により、日常生活に関する行為を後見人や保佐人の取消権の範囲から除き、本人は、後見開始或いは補佐開始の審判を受けた後も、日常生活に関する行為をする能力が認められることになりました。
後見は、精神上の障害によって判断能力を喪失してしまった人について、家庭裁判所において後見開始の審判を行って、本人の日常生活に必要な範囲の行為を除いた法律行為を取り消しできるものとした上、成年後見人を選任して、本人に代わって行為をする代理権や本人の行為の取消権を行使させて、本人の判断能力を補う制度です。
この制度は、従来の禁治産制度が民法改正によって新しく生まれ変わったもので、平成12年4月から始まりました。
さきほど、成年後見制度の基本理念について申し上げた際に禁治産者の行為について一例を挙げた通り、従来は、後見人に本人(被後見人といいます)の全ての行為についての取消権が認められていましたが、新しい制度となってからは、日常生活に必要な範囲の行為については、取り消し得る行為から除かれることとなりました。
民法は、後見開始の審判の対象となる人について、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」と規定しています。
「精神上の障害」とは、痴呆(老人性痴呆、初老期痴呆、若年性痴呆)、知的障害、精神障害のほか、自閉症や、事故による脳の損傷や脳の疾患を原因とするものも含めた、身体上の障害を除く精神的障害をいうものとされており、一時的な昏睡状態や意識障害は含まれません。
「事理を弁識する能力」とは、法律行為の利害得失を判断する能力をいうものとされていますが、簡単に言いますと判断能力のことです。
「欠く常況」とは、常時判断能力を失っていることをいいます。
後見開始の審判の管轄裁判所は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。
申立ができる人は法律で決められています。
民法において申立権者とされているのは、本人、本人と一定の親族関係にある人、本人の成年後見人等の本人を保護すべき立場にある人、公益の代表者としての検察官ですが、老人福祉法等の法律においては、痴呆性高齢者、知的障害者、精神障害者に関して、市町村長も申立権者とされています。
家庭裁判所における審理は、本人の精神の状況についての鑑定、本人の調査、本人の財産の状況についての調査、成年後見人の候補者の調査などを実施して、進められることになります。
そして、前述の基本理念である「本人の自己決定権の尊重」を手続的な面から担保するために、家庭裁判所における審理においては、本人の陳述を聴かなければならないとされています。
但し、実際は、判断能力を喪失していることから、家庭裁判所の調査官の調査によって行われることが多いと言えます。
審理の結果、後見開始の審判をするときは、家庭裁判所は、職権で成年後見人を選任しなければなりません。
民法では、後見人になれない人として、次の者が挙げられています。
民法では、後見人ができることとして、次の通り規定されています。
まず、御本人(被後見人)の親族の方に当事務所に来所して頂いて、御事情を聴き取りさせて頂きます。
そして、御本人宅或いは病院へ出向いて、面談をさせて頂きます。
その後、必要書類を集めて、家庭裁判所に申立てを致します。この必要書類としては、戸籍謄本や住民票のほか、後見等の登記をされていないことの証明書等で、不動産を所有されている場合には登記簿謄本や固定資産評価証明書も必要となります。また、病院の診断書については、家庭裁判所の指定の用紙で作成する必要があります。
申立後、家庭裁判所での調査・審理を経て、後見開始の審判が下され、審判が確定すると、後見ファイルへの登記がなされることとなりますが、申立から後見ファイルへの登記までは、約2〜4ヶ月を要します。
当事務所では、最初の事情聴取から、御本人との面談、申立書の作成、必要書類の収集、調査期日当日の家庭裁判所への付き添いまで、サポートをさせて頂きます。
保佐は、精神上の障害によって、著しく不十分ではあるものの、一応判断能力を持っている人について、家庭裁判所において保佐開始の審判を行って、本人の一定の範囲内の行為については保佐人の同意を得て行わせ、同意を得ない行為は取り消すことができるものとし、保佐人も取消権を行使することができ、申立によって保佐人が代理権を持つこともできる、という形で、本人の判断能力を補う制度です。
この制度は、従来の準禁治産制度が、民法改正によって新しく生まれ変わったもので、後見制度と共に平成12年4月から始まりました。
従来は、保佐人には、民法で定められていた重要な財産に関する行為について同意権が認められていたに過ぎず、代理権や取消権は認められていませんでした。そのため、どれだけ本人が希望しても、代理権による保護は受けられず、また、民法で定められた行為以外の行為については、同意権による保護さえも受けられませんでした。「本人の自己決定権の尊重」が重視された結果、かえってこの様な不自由なものとなっていたのです。
そこで、新しい成年後見制度では、保佐人の取消権を認め、さらに、本人らの請求によって、民法で定められた行為以外の行為(日常生活に必要な範囲の行為を除く)についての同意権や、特定の法律行為についての代理権まで、保佐人に認めることができることとなりました。
民法は、保佐開始の審判の対象となる人について、「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者」と規定しています。
「精神上の障害」と「事理を弁識する能力」については、前述の「後見開始の審判の対象となる人」の項で申し上げたものと同じです。
「著しく不十分」とは、判断能力が著しく欠けているが、一応判断能力はあるという状態をいいます。
なお、民法では、判断能力が著しく不十分な人のうち、判断能力を欠く常況にある人については、保佐開始の審判の対象者から除かれています。
これらについては、後見について申し上げたものと同じです。
これについても、後見について申し上げたものと同じです。
前述の後見人になれない人を列挙した民法の規定が準用されることになっていますので、保佐人になれない人は、
民法では、保佐人ができることとして、次の通り規定されています。
成年後見制度においては、保佐人にも取消権が認められました。
そのため、本人が保佐人の同意を得ないで行った行為について、本人は取り消しを希望していないのに、保佐人が独自に取消権を行使してこれを取り消すことができることとなるため、かえって本人の自己決定権が不当に制約されてしまう可能性があります。
そこで、本人の自己決定権の尊重の観点から、保佐人の同意が必要となる行為について、保佐人が、同意しても本人の利益が害されるおそれがないのに同意をしない場合には、本人の請求により、家庭裁判所が、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる様になりました。
後見について申し上げたものと同じ流れとなります。
保佐の場合も、申立から後見登記ファイルへの登記まで、やはり約2〜4ヶ月を要します。
補助は、軽度の精神上の障害によって、不十分であるものの判断能力を持っている人について、家庭裁判所において、補助開始の審判と共に、特定の法律行為について補助人の代理権、及び民法で定められた重要な財産に関する行為の範囲内で定めた特定の法律行為について補助人の同意権及び取消権を与える審判を併せて行い、本人の判断能力を補う制度です。
この補助の制度は、「法定後見の第三の制度」として、新しい成年後見制度において新設されたもので、補助人の代理権や取消権の範囲を本人が選択できるという、ユニークな構造となっています。
民法は、補助開始の審判の対象となる人について、「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者」と規定しています。
「精神上の障害」と「事理を弁識する能力」については、前述の「後見開始の審判の対象となる人」の項で申し上げたものと同じです。
「不十分」とは、保佐開始の審判の対象となる人より判断能力は高いが、なお十分ではないという状態をいいます。
民法では、後見及び保佐の対象となる人については、補助開始の審判の対象者から除かれていますので、理論的には保佐と補助は明確に区別されることになりますが、実務では、保佐と補助の区別は、民法で定められた行為について包括的な援助(同意権)が必要か、部分的な援助で足りるか、という観点から判断することになります。
これらについては、後見について申し上げたものと同じです。
本人の精神の状況についての鑑定、本人の調査、本人の財産の状況についての調査、成年後見人の候補者の調査などを実施すること、審理において本人の陳述を聴かなければならないことは、後見について申し上げたものと同じです。
民法では、補助開始の審判は、同意権付与または代理権付与の審判のいずれか(あるいはこの両方)と共にしなければならないとされています。補助の制度においては、補助開始の審判自体は具体的な内容を定めるものではなく、同意権や代理権を付与する審判があって、初めて具体的な内容のあるものとなるのです。
従って、同意権付与や代理権付与の審判が全て取り消された場合は、補助開始の審判自体も取り消されることとなります。
なお、本人以外の人が補助開始の審判を申し立てた場合に、家庭裁判所が補助開始の審判を出すには、本人の同意が必要とされています。但し、本人の同意は補助開始の審判を出すための要件であり、申立の要件ではありませんので、必ずしも家庭裁判所への申立時に得られていなければならない訳ではなく、審理中に得られれば良いとされています。
保佐人と同じく、前述の後見になれない人を列挙した民法の規定が準用されることになっていますので、補助人になれない人は、
ということになります。
民法では、補助人ができることとして、次の通り規定されています。
前述の通り、補助人にも取消権が認められていますので、本人が補助人の同意を得ないで行った行為について、保佐人について申し上げたことと同様の問題が生じます。
そこで、保佐人と同様に、本人の自己決定権の尊重の観点から、補助人の同意が必要となる行為について、補助人が、同意しても本人の利益が害されるおそれがないのに同意をしない場合には、本人の請求により、家庭裁判所が、補助人の同意に代わる許可を与えることができる様になりました。
後見について申し上げたものと同じ流れとなります。
補助の場合も、申立から後見登記ファイルへの登記まで、やはり約2〜4ヶ月を要します。
以上の3つのいずれかの申立をしたが、本人の精神の状況を審理した結果、申立の類型以外の類型に該当することが判明する、ということがあり得ます。その場合には、どうなるのでしょうか?
例えば、保佐開始の審判の申立がなされ、本人の精神の状況を審理した結果、後見の対象者であると判断された場合に、後見開始の審判が下されるか、という様に、申立類型より本人の保護を必要とする類型に該当することが判明した場合に、申立類型と異なるその類型の審判が下されるのでしょうか?
この場合、申立の趣旨の変更、又は申立類型と異なるその類型の開始の審判を求める申立の予備的追加(申立類型の審判が認められなければ異なる類型の審判を求めるという申立の方法です)をしなければ、その類型の開始の審判は下されないとされています。
本人の能力について申立類型より大きい制限が加えられる類型の審判の申立が、当初の類型の申立に含まれるとは考えられないためです。
例えば、後見開始の審判の申立がなされ、本人の精神の状況を審理した結果、保佐の対象者であると判断された場合に、保佐開始の審判が下されるか、という様に、申立類型より本人の能力制限が小さくなる類型に該当することが判明した場合に、申立類型と異なるその類型の審判が下されるのでしょうか?
この場合は、見解が分かれており、(1)と同様に解する見解と、(1)とは逆にその類型の審判を下せると解する見解があります。
しかし、後者の見解によったとしても、後見開始或いは保佐開始の審判の申立がなされたが、審理の結果補助開始の審判が相当であると認められた場合には、前述の通り、補助開始の審判が同意権付与または代理権付与の審判と共にしなければならないことから、同意権付与または代理権付与の審判の申立がなされない限り、補助開始の審判をすることはできないこととなります。
具体的には、
また、家庭裁判所は、後見人・保佐人・補助人の職務の遂行に疑問がある場合には、事情を聴取したり、家庭裁判所の調査官や公認会計士等に調査をさせたりすることができます。
規模の大きい家庭裁判所では、事案に応じて、定期的に、本人の生活や財産の状況、収支報告、その他後見人・保佐人・補助人として行った事務等について、後見人・保佐人・補助人に報告させ、後見人・保佐人・補助人の業務内容や財産状況をチェックしています。
従って、後見人・保佐人・補助人に就任した方は、本人の現状や財産・収支の状況についての裏付けとなる通帳や領収書等のコピーを家庭裁判所に提出しなければなりませんので、日頃から領収書や取引の書類をしっかり保管して、本人の財産・収支の状況を正確に把握しておく必要があります。
ここまで申し上げた通り、後見人・保佐人・補助人は、代理権や同意権(後見人や保佐人は取消権も)を持っているわけですが、その対象は、本人の財産管理から生活・療養看護、さらには介護の手配等に至るまで、非常に範囲の広いものとなります。
そのため、もし仮に、後見人・保佐人・補助人が、その権限を濫用したり、任務を怠ったりすれば、本人の財産・生活・健康に深刻な影響をもたらしかねません。
そこで、本人が不当に不利益を受けることのない様に、後見人・保佐人・補助人に対する指導・監督が必要となります。
後見人・保佐人・補助人に対する指導・監督は、基本的には家庭裁判所の役割となり、その概要は6で申し上げた通りなのですが、本人が多額の財産を持っていてより細やかな監督が必要な場合や、後見人・保佐人・補助人に対して助言等が必要な場合には、家庭裁判所による監督を補完する者として、後見監督人・保佐監督人・補助監督人を選任することができます。
後見監督人の選任・職務・報酬については、次の通りです。なお、保佐監督人と補助監督人の選任・職務・報酬については、民法でこれらについての後見監督人の規定が準用されることになっているので、省略させて頂きます。
後見監督人は、申立てにより又は職権で、家庭裁判所が、本人の心身の状態や本人の生活や財産の状況等の一切の事情を考慮して、選任します。
後見監督人になるための特別な資格はありませんが、前述の後見人になれない人の他、成年後見人の配偶者・直系血族・兄弟姉妹は、後見監督人になることはできません。これらの者は、「監督」という職務にはふさわしくないということから、後見監督人になれないとされています。
民法上、次の職務が挙げられています。
民法では、後見人・保佐人・補助人は、家庭裁判所の審判によって、被後見人・被保佐人・被補助人の財産の中から、相当額の報酬を得ることができるとされています。
そして、この規定は、後見監督人・保佐監督人・補助監督人にも準用されるとされていますので、後見監督人・保佐監督人・補助監督人も、被後見人・被保佐人・被補助人の財産の中から、相当額の報酬を得ることができます。