各種トラブルの解決

マンションライフでのトラブル

念願の分譲マンションを購入され、快適なマンションライフを楽しみたいと思っていたにも拘わらず、思わぬトラブルに巻き込まれてしまったら、どの様に対処すべきでしょうか?

賃貸マンションでのトラブルについては、「賃貸住宅におけるトラブル」の項で、既に取り上げましたので、ここでは、分譲マンションでのトラブルについて、Q&Aの形式で説明をさせて頂きます。

1.
売主の不動産会社と売買契約を締結し、手付金を支払いました。ところが、引き渡し前に、その不動産会社が倒産してしまいました。手付金を返してもらえるのでしょうか?

→→→ 宅地建物取引業法においては、売主となる不動産会社に対し、一定額以上の手付金を買主から受け取る場合には、保全措置を講ずることを義務付けています。この場合、保証会社等による保証や、保険会社による保険によって手付金が保全されます。この様な保全措置が講じられていれば、売主が倒産して物件の引き渡しを受けられなくなっても、保証会社等から手付金を全額返還してもらえることとなります。

保全措置が取られている場合には、売主である不動産会社から保証証券や保険証券が買主に交付されます。

保証証券や保険証券がない場合、売主が倒産すると、買主は一般債権者となります。その場合、ケースによって異なりますが、手付金全額を受け取れない可能性もあります。

2.
不動産会社の販売員が、「このマンションは室内犬や猫なら飼えます。」と言ったので、そのマンションを購入しようと思ったのですが、契約の前に管理規約を見ると、ペットを飼うことが禁止されていました。ペットを飼える様に管理規約を変更することはできるでしょうか?

→→→ 宅地建物取引業法には、不動産会社が、購入予定者に対して物件に関する重要事項を説明する義務を負うとする規定があります。この説明は、宅地建物取引主任者の資格を有する担当者が書面を交付して行いますので、実際にペットが飼えるのか、書面にどの様に記載されているのかを確認する必要があります。また、マンションの管理規約(新築マンションの場合は管理規約案)でペットに関する項目を確認することも必要です。

ペットを飼うことが禁止されているマンションであっても、入居後に管理組合で協議して、ペットを飼える様に管理規約を変更することは、できないわけではありませんが、現実問題として、管理規約を変更することは簡単なことではありませんので、最初からペットを飼うことが認められているマンションを探すべきでしょう。

3.
晴れた日にマンションのバルコニーの欄干に布団をかけて干していると、「使用細則で禁止されているのでやめて下さい。」と言われました。こういう布団の干し方は認められないのでしょうか?

→→→ マンションには、管理組合の運営等を主に定めた管理規約と、マンション内の日常生活におけるルールを定めた使用細則がありますが、最近は、この使用細則でバルコニーの手すりに洗濯物や寝具や敷物等を干すことを禁止しているマンションが多いようです。特に、高層・超高層マンションの場合は、万一落下した場合に危険であることや、下の階にほこりやゴミが落ちて迷惑であること等の理由で禁止されているようです。

マンションに居住する場合は、管理規約だけでなく、使用細則についても熟読して、十分に理解しておく必要があります。

4.
中古マンションを購入したのですが、幹線道路沿いのためか、車が通る音がうるさいので、窓ガラスを防音ガラスに取り替えたいのですが、個人で取り替えることはできるでしょうか?

→→→ マンションの窓は共用部分ですので、個人で取り替えることはできません。

マンションには、専有部分共用部分があります。壁・天井・床・柱等のマンションの構造を支える部分や、共同で使用する廊下やエレベーター等は、共用部分ですので、個人でリフォームすることはできません。これに対し、各住戸の玄関の内側からサッシの内側までの居住部分は専有部分ですので、間仕切り壁を含む室内の部分は、個人でリフォームすることができます。

窓は、サッシの内側の外ですから、共用部分となりますので、個人で取り替えることはできないのが原則です。但し、サッシの鍵や網戸については、区分所有者の専用使用が認められているので、ガラスが割れた時の交換や鍵の交換といったメンテナンスについては、個人が行うことが認められていることが多いようです。

防音ガラスに取り替えたい場合、現在のサッシの内側にもう一段サッシを取り付けて、二重構造にするといった対応が考えられます。但し、この場合は専用部分の工事ではありますが、近隣に工事の騒音の迷惑をかけることになりますので、管理組合に届け出て、近隣の住戸にあいさつをする等、無用のトラブルを避ける様にすべきでしょう。

5.
中古マンションを購入して住んでいたのですが、ある日、天井から水漏れが発生し、家財道具が水浸しになって使い物にならなくなってしまいました。誰に対してどういう請求ができるのでしょうか?

→→→ 「賃貸住宅におけるトラブル」の項でも、同様の問題点について申し上げましたが、まずは水漏れの原因を特定する必要があります。

そして、天井からの水漏れであれば、上階からの何らかの原因(洗濯機や風呂場からの水漏れ等)による場合が、まず考えられます。

上階の住人に連絡を取り、管理人に立ち会ってもらった上で、事情を聴き取り、住戸内に立ち入らせてもらい、特に水漏れの発生している箇所の真上にあたる箇所を中心に調べることになります。

その結果、上階の住人が水漏れの原因を作っていたことが確認できれば、上階の住人に対して損害賠償請求をすることとなります。この例では、家財道具の弁償の他、水漏れに対する何らかの応急処置を依頼していた場合にはその費用も併せて請求することになります。

次に、上階の住人に原因がなかった場合には、マンションの給排水間等の腐食・劣化に原因があると考えられます。

マンションの管理組合と上階の住人の協力を得た上、専門家に依頼して、上階の床下の給排水設備の調査を行う必要があります。

その結果、給排水管からの水漏れであることが確認できた場合、その給排水管が「専用部分」「共用部分」のいずれに該当するかで、損害賠償請求の相手方が変わってきます。

その給排水管が、上階の住人の専用で使用されている枝管であれば、専用部分の設置・保存に問題がある場合となり、上階の住人に対して上記の損害賠償請求をすることとなります。

但し、その様な給排水管であっても、コンクリートスラブの下にあるために専用部分からの点検・修理を行うことが困難である場合には、その給排水管は「共用部分」にあたる、とした最高裁判例もありますので、常にその様な損害賠償請求の形になるとは言えません。

他方、その給排水管が、そうではない共用部分の給排水管である場合には、共用部分の設置・保存に問題がある場合となり、全区分所有者(管理組合)に対して上記の損害賠償請求をすることとなります。

6.
私の部屋の真上の階の部屋に住んでいる家族が歩いたり椅子を引いたりする音がうるさく、非常に気になります。どうすればいいでしょうか?

→→→ マンションは、上階の床が下階の天井でもあるという構造上の特性があるため、この様な生活騒音についてのトラブルがよく起こります。とりわけ、近年は、衛生面やインテリアの面からフローリングを採用するマンションが増えており、それが生活騒音のトラブルを頻発させる結果となっています。

また、音の感じ方にも個人差がありますので、本人(上階の住人)は気をつけているつもりでも、下階の住人は迷惑であると感じてしまうことがあり、この個人差がトラブルを悪化させ、裁判にまで発展してしまうことも少なくありません。

マンションでは、コンクリート1枚を挟んで他人同士が共同生活を送っているわけですから、ある程度の生活騒音は我慢しなければなりません。

しかし、被害の程度や騒音の事情等に鑑みて、平均人の通常の感覚を基準として客観的に判断して、ここまでなら我慢できるというボーダーラインである「受忍限度」を超えると認定される場合には、下階の住人は、生活騒音によって肉体的・精神的苦痛を受けたとして、上階の住人に対して慰謝料を請求できることになります。

7.
私が住んでいるマンションには、敷地内駐車場があるのですが、全世帯分の駐車スペースがないため、やむを得ず敷地外の月極駐車場を利用して、空きが出るのを待っています。ところが、いつまで待っても、全然空きの順番が回ってきません。どうすればいいでしょうか?

→→→ マンションの駐車場使用契約に、「使用契約期間」の条項と併せて、「契約期間の更新」についての自動更新の条項が定められている場合があります。

この自動更新の条項があると、契約者は、自ら契約解除を申し出ない限り、いつまでも敷地内駐車場を使用し続けることが可能となります。そのため、極端な例では、契約者本人が自家用車を売却した後、勝手に第三者に敷地内駐車場を賃貸し、使用料を得て収入としているケースまであります。これでは、いつまでたっても空きの順番が回ってくる筈がありません。

住人集会において、「駐車場使用者は定期更新日をもって駐車場の区画を明け渡さなければならない。」という自動更新を認めない内容に駐車場使用契約を変更すると共に、契約期間中に第三者に駐車場を転貸することも禁止することによって、一部の住人だけが独占的に敷地内駐車場を使用することを防止できます。

8.
私が入居した当時は、管理規約にペットを飼うことを禁止する条項はありませんでしたが、その後、管理規約が変更されて、ペットを飼うことは全面禁止となりました。ところが、私の隣に住んでいる家族は、管理規約が変更された後もペットを飼い続けているので、飼うのを止める様にお願いしたのですが、全く止める様子がありません。訴訟で止めさせる様に請求できるでしょうか?

→→→ 分譲マンションでは、区分所有法において、「共同の利益に反する行為をしてはならない」と定められています。

そして、マンション内での動物の飼育は、一般的に他の住民に有形無形の影響を及ぼす恐れがある行為であり、それを一律に共同の利益に反する行為として管理規約で禁止することも区分所有法上許される、と判示した裁判例もあります。

従って、管理規約に違反してペットを飼っていると、飼い主は、どれだけ躾けがよくできていて、おとなしいペットであっても、共同の利益に反する行為に該当するとして、ペットを飼うことを止めることを求められ、それでもなお止めない場合には、管理組合が飼育の差し止めや損害賠償請求をすることができることとなります。

9.
私が住んでいるマンションは共働きの世帯が多いためか、総会の出席率が低く、過半数の賛成を得るのも難しい状態で、4分の3以上の賛成を必要とする特別多数決議を得ることは、ほぼ不可能です。そこで、特別多数決議が必要な事項についても過半数の賛成で成立する普通決議だけで決定できるようにしたいのですが、規約をその様に変更することはできるでしょうか?

→→→ 区分所有法では、規約の設定・変更・廃止、管理組合の法人化、建て替え等の場合には、区分所有者と議決権の各々4分の3以上の多数や各々5分の4以上の多数の賛成が必要とする特別多数決議が必要であると規定されています。これらの場合には、マンションの住民の生活に大きな影響を及ぼすこととなるため、慎重を期すべく、特別に多数の賛成が必要であるとされているのです。

区分所有法において特別多数決議が必要とされている事項を、規約を変更して普通決議で足りるとすることができるか、ですが、この様な区分所有法の趣旨からすれば、「できない」ということになります。

もし仮に、この様な変更が認められるとすると、過半数の決議だけでマンションの建て替えが認められることになりますが、それでは、最大で49%の住人が賛成していないにも拘らず、マンションの住民の生活に重大な影響を及ぼす建て替えが実行されてしまうこととなり、明らかに妥当ではありません。

従って、特別多数決議を普通決議に変更することはできませんので、あらかじめ住人が出席できる日程をアンケートで問い合わせたり、委任状の提出を求めたりして、出席率を確保するべきでしょう。

10.
駅の近くの分譲マンションに住んでいるのですが、最近、マンション内にバーができ、夜中に居住者以外の人が多数出入りして騒ぐ様になりました。管理規約では住居以外の使用が禁止されているので、その部屋の住民に抗議したのですが、「俺が自分の部屋をどう使おうと自由だろう!」と言って聞き入れず、今も強引に営業を続けています。止めさせることはできるでしょうか?

→→→ 区分所有者の共同の利益に反する行為は、区分所有法第6条において禁止されていますので、一部の区分所有者が共同の利益に反する行為をした場合は、他の区分所有者は、その行為を止めさせるために必要な措置を取ることができます。

措置の内容としては、共同の利益に反する行為の程度により、

  1. 行為の禁止の請求
  2. 専有部分の使用禁止の請求
  3. 専有部分の競売の請求

が考えられます。

このケースの場合は、このうちの「1.」の請求、つまりバーの営業禁止を請求できると考えられます。最初は直接に営業中止を要求し、それでも改善されなければ訴訟を提起することとなります。

訴訟を提起するには、管理組合で総会を開いて、バーの閉鎖を求める訴訟を提起することを決議することが前提となります。この決議が成立するためには、区分所有者と議決権の各々過半数の賛成が必要です。なお、この総会には、バーの部屋の区分所有者に出席を求めて、弁明の機会を与えなければなりませんので、注意して下さい。具体的には、総会への出席を求める通知を届けることになります。

この様な決議を経て、管理組合が勝訴すれば、強制的にバーを閉店させることができます。

11.
私が住んでいるマンションは、居住専用に作られていて、管理規約で営業目的の使用が禁止されています。しかし、住人の1人が部屋を他人に賃貸して、その賃借人が喫茶店を始めてしまいました。客が大勢マンションに出入りするため、治安上も不安ですので、管理組合が喫茶店の経営者である賃借人に営業を止めるように求めたのですが、「私は賃借人だから、そんな規約を守る必要はないし、第一そんな規約は無効ではないのか?」と言い張って、聞き入れようとしません。こういう営業禁止規約は有効なのでしょうか?また、賃借人にも営業禁止規約を守らせることはできるのでしょうか?

→→→ 区分所有法第30条は、建物や敷地等の管理や使用について規約で定めることを認めており、建物には居住者の部屋も当然に含まれますから、規約で部屋の用途を制限することも認められます。

但し、所有者は部屋を自由に使用できるのが原則ですから、何でも規約で制限できるわけではなく、他の居住者の権利を害する恐れがあることが必要です。このケースの場合は、居住専用のマンションであり、居住者は安全で静かな環境で生活することを求めていると考えられますから、不特定多数の客の出入りはマンション内の安全な環境を害していると言えます。従って、他の居住者の権利を害していますので、営業禁止規約は有効です。

また、区分所有法第46条第2項は、占有者も所有者と同じ義務を負うと規定しています。この占有者とは、「部屋を使用している人」のことであり、所有権の有無とは関係ありません。従って、賃借人も、営業禁止規約に従う義務があります。

従って、管理組合は、喫茶店の経営者である賃借人に対し、営業禁止規約を守らせ、喫茶店の営業を止める様に請求することができます。

12.
マンションの管理を委託していた管理会社が倒産してしまいました。これまでに組合員である住人から集めていた管理費や修繕費はどうなるのでしょうか?

→→→ マンション管理適正化法において、組合財産の分別管理が義務付けられていますので、組合財産は管理会社の財産とは別個に管理しなければならないことになります。管理組合が法人であれば、法人名義で財産を管理することになりますが、そうでない場合は、理事長名義の口座で管理することになります。また、理事長が決まっていない場合には、「○○マンション管理組合代行○○管理会社」といった名義の口座を開設して組合の財産を管理し、理事長が決まり次第、理事長名義の口座に変更することになります。

いずれにせよ、金融機関に対して預金は管理組合のものであると主張し、差押債権者の請求に応じない様に求めることが必要です。そうすることで、金融機関も差押債権者への払戻しを留保すると思われ、その間に集会を開く時間を作ることができます。

また、差押を受けてしまった場合には、差押財産は組合の財産であると主張して、強制執行の手続を停止させるために「第三者異議の訴え」と「強制執行停止の申立」を提起することを集会で決議し、提訴することになります。

13.
私が住んでいる分譲マンションは、第三者に賃貸して、本来の所有者が居住していない部屋がいくつもあります。その部屋の住人(賃借人)は、管理費や修繕費を負担せず、管理組合の運営にも参加していません。このままでは、居住所有者との不公平が大きくなるばかりなので、不在の所有者に対して管理組合運営の協力費を支払ってもらえる様に、管理規約を改正することを検討しているのですが、規約でこの様な協力費を不在所有者に請求することを決めることはできるでしょうか?

→→→ 都市部のマンションでは、部屋の所有者が転勤等で不在となり、第三者に賃貸されるケースが多く見られます。ところが、近年では、居住者の高齢化と相俟って、保守管理や修繕を担う管理組合の役員になる人が不足し、一部の居住者に管理組合の運営の負担が集中してしまうマンションも見られる様になっています。

そのため、最近では、居住所有者との管理組合運営の負担の不公平を是正する目的で管理規約を変更し、不在所有者に対して管理組合費に「協力金」を上乗せして請求するケースが見られますが、その場合、その様な規約変更は、区分所有法第31条第1項後段の「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」にあたるのではないか、が問題となります。

この点について、最高裁判所は、平成22年1月26日、「不在所有者は管理組合の役員になる義務を免れているだけでなく、管理組合の活動について日常的な労務の提供をするなどの貢献をしていない」一方で「居住所有者だけが管理組合の役員に就任し、管理組合の活動に参加するなどの貢献をして、不在居住者を含む全所有者のためにマンションの保守管理に努め、良好な住環境の維持を図っている」として、「不在所有者は利益のみを享受している」と認定しました。そして、「マンションの管理組合を運営するに当たって必要となる業務及びその費用は、本来その構成員である組合員全員が平等に負担すべきものであり、管理組合の業務を分担することが一般的に困難な不在所有者に対して、規約変更により一定の金銭的負担を求め、不在所有者と居住所有者との間の不公平を是正することには必要性と合理性が認められないものではない」とした上で、「規約変更の必要性及び合理性と不在所有者が受ける不利益の程度を比較考量し、協力金の支払を拒否する不在所有者の人数や協力金の額を考慮すれば、本件規約変更は、不在所有者の受忍すべき限度を超えるとまでは言えず、区分所有法第31条第1項後段には該当しない。」と判示しました。

従って、管理組合費と協力金の金額との比率や、協力金の支払を拒否する不在所有者の人数や全所有者に占める割合等を比較考量して、不在所有者の受忍限度を超える程度でなければ、管理規約を改正して不在所有者に協力費を請求することも認められると考えられるでしょう。

14.
住んでいる分譲マンションのエレベーターに乗っていたところ、エレベーターが突然止まってしまい、復旧まで1時間以上もエレベーターに閉じ込められて、出勤することができなくなり、勤務先の会社の会議に間に合わなくなってしまいました。私は誰に責任を追及できるのでしょうか?

→→→ 分譲マンションのエレベーターは、共用部分にあたります。共用部分は、区分所有者全員の共用である場合と、一部の区分所有者の共用である場合がありますが、一般的に、エレベーターは、そのマンションの区分所有者全員の共用部分として、区分所有者全員で管理することになっている場合が多いので、区分所有者全員の共用である場合について申し上げます。

エレベーター自体にあった欠陥が原因であった場合には、エレベーターの製造会社に責任を追及することができます。また、エレベーターの管理が不十分であったことが原因であった場合には、エレベーターの管理業者に責任を追及することができます。

15.
私の知人が住んでいる分譲マンションで、一人暮らしをされていた御老人の郵便受けに新聞が何日分もたまっていたのを不審に思った管理人が親族の方に連絡をされて、中へ入ってみたところ、亡くなられているのが発見された、ということがあったそうです。このケースでは相続人がおられた様ですが、相続人がおられない場合には、どうなるのでしょうか?

→→→ 少子高齢化が言われて久しいですが、それは同時に核家族化が進むことでもあり、築年数の経過したマンションで一人暮らしをされる高齢者が増えるという新たな傾向が起きています。

そして、その結果、このケースの様に、一人暮らしの高齢者が誰にも看取られることなく亡くなられる、という非常に残念な出来事も起こる様になっています。

さて、分譲マンションにお住まいの一人暮らしの高齢者が亡くなり、その方に相続人がいない場合ですが、この場合には、マンションの一室が国有化されるという結果になる可能性があります。

民法では、共有者の1人が相続人なくして死亡した場合、その持分は他の共有者に帰属するとされており(民法第255条)、これを分譲マンションの様な区分所有建物にあてはめると、区分所有者の1人が相続人なくして死亡した場合には、その一室は他の区分所有者全員の共有となる、ということになるかに思えます。

ところが、区分所有法第24条は、この民法第255条を敷地利用権には適用しないと規定しているので、専有部分と敷地利用権を分離して処分することが原則として禁止されている区分所有建物(分譲マンションなど)においては、相続人なくして死亡した区分所有者の権利である区分所有権と敷地利用権は、特別縁故者へ分与されるか、特別縁故者もいない場合には国庫へ帰属することとなり、他の区分所有者の共有とはならないのです。

この特別縁故者とは、相続人ではないけれども、被相続人と生前関係の深かった人のことであり、被相続人と生計を共にしていた内縁の妻や、長年にわたって被相続人の療養看護に努めてきた人がその例として挙げられます。但し、特別縁故者として分与を受けるためには、家庭裁判所で特別縁故者と認定される必要があります。

そして、特別縁故者もいないということになれば、最終的には国有財産となるので、「マンションの管理組合の組合員の1人が日本国になる」という珍しい結果となるのです。

この様な結果となることは、通常は考えにくいですが、万一の場合の知識として、把握しておいて下さい。